映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』感想はしり書き

原作を読んでいない人間の感想です。言わずもがな映画についても素人。原作漫画を読めばいろいろと納得することがあるのかも!

 

 

魅力的なところもある映画だったが、TVシリーズと比べると見劣りするかな。Z-13倉庫に至るまでのほとんど全ての展開が説明的すぎる。

あと、若き露伴と七瀬の回想シーンが古臭すぎる〜!ああいう女性キャラクターに一定の魅力があるのは認めるけれど、2023年においては、使い古された女性像だと言わざるを得ない。
露伴のおばあちゃんの役者さんがいいなあと思って見てたら白石加代子だった。そりゃ良いわよ……

サインを求めてきた若者の服装にケチつけて「ここは先人の作品が眠る場所だぞ云々」と説教垂れる岸辺露伴は嫌だった。芸術はどんな服装・趣味・思想信条の人びとに対しても開かれている。

サモトラケのニケのシーンは驚きだった。ほかの映像作品にルーヴルがどう登場するのか知らないけれど、ああいう使い方も美術館側としてはオーケーなんだ……。あの場で起きていることは、唐突に人が死ぬ、というだけのこと(しかもそこに魅力たっぷりの謎があるかと言えばそうでもなく、視聴者はジャックの死の理由を予告映像などからすでになんとなく知っている)。そこにある種のビジュアル的付加を加えるものとしてのニケ(あれがニケの場面である必要性ってあまりないよね?単なる映えというか)。

ルーブルを訪れた時の露伴の服とメイクが良かったな。黒いタイと、心なしかいつもより黒く見えるアイメイク。

Z-13倉庫に向かう時の不安定なカメラワークが上手い。

Z-13倉庫での集団発狂の場面。画面手前で辰巳が首を締められてもがき、奥でエマがピエールの幻影に向かって膝立ちのまま歩いている瞬間が、ダンス的だった。
目元に白いページをくっつけて地下から這い上がってくる露伴は、オペラ座の怪人を彷彿とさせる。

泉君が後悔も罪もなにもない存在なのめっちゃ好き〜!岸辺露伴の担当編集をやっているだけあって、最強。ずっと露伴先生とデコボココンビしてて欲しい。

あの絵(=祖先が犯した罪まで含む過去、が襲い掛かってくる絵)の前で露伴が見たのが仁左衛門だった時、彼が露伴の先祖なのだなと了解したのだけど、実は血が繋がっているのは七瀬のほうだった。てことは、回想シーンで仁左衛門高橋一生がやる道理はなくない!?道理がないのに高橋一生を使うのは安っぽいと思ってしまう。露伴・一生と、爽やかな仁左衛門・一生は、調和もしてなければエッジの効いた対比になってもいないと感じた。
そもそも終盤の江戸時代?とそれまでのパリの並置も奇妙っちゃ奇妙だ。藩の御用絵師の息子に過ぎない(しかもあとを継がなかった)仁左衛門の絵がフランスに渡った理由は、作中で何も説明されなかった以上、「物語の舞台をルーブルに移したかったから」ということになる……?

高橋一生はうめいたり怯えたりする演技が好きかもしれない。奉行所で低くうめき叫ぶところも良いが、Z-13倉庫で怪異を前にして怯える声がとくに好きだ。普段は達観しているキャラクターなのに、恐怖するところはちゃんと恐怖するのが好きだ。

 

 

悪くもなかったけど忙しいなかお金と時間を使っていくほどでもなかったかな。消化不良なので、あらためて最高の高橋一生を摂取するために『兎、波を走る』を観に行きたいよ~~~!