九月某日 (日記)

唐突な思い付きで両国へ行った。気になっていた舞台を観てきた。四日間しかない上演期間中の一日に人と会う約束が入った時に、じゃあ舞台のほうはやめとくか(あんま出かけると疲れそうだし)、と思ったきり忘れていたのだった。最終日の昼になって公式のSNS投稿が視界に入り、やはり行かなくてはという気持ちになった。

行かなくては行かなくては。

フットワークは重いほうなので、珍しい直観の働き方だった。このまま今日を予定どおり終えるよりも両国へ行った方が絶対にいいと思った。

早めに着き、連日当日券は足りているとのことだったので、時間まで回向院で過ごした。お寺の方があげる念仏を聞く。同称十念を唱えていたので観智院と同じ宗派だ。全体にあまり聞いたことのない、少し荒々しい詠み上げ方だった。けど「なーむあーみだーぶ」と大きく長く唱える声は気持ちよく響く。達磨が目に入る。


(いのちが遠くへ行ってしまうことのこわさ。とつぜんにみんなから離れて遠くへ行かねばならなくなることのさみしさ。いのちに関するおそろしさ。)


ここ数日のあいだ、秋の気配は徐々に強くなり、夏に聞いていた音楽はそぐわなくなりつつある。このまま秋に引きずり込まれてしまうのかと思っていたが(秋に引きずり込まれると淋しくて怖くて何もできなくなってしまう)、今日を勢いとしてまたしばらく動けそうな気がする。安易な勢いは、とつぜんの電池切れを招くこともあるけれど。

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秋になると宇多田ヒカルを聴く。ぴったりすぎて、聴いているうちにメランコリーを発症することもある。今はまだ平気。帰りの乗り換え駅でピアスを買った。

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2020年9月30日投稿