Noism 春の祭典ほか 感想

作品の展開・演出に関するネタバレがあります。

 

 

Noismはめいっぱいの身体そのもの!という感じで気持ちいい。その身体に集中させてくれない「夏の名残のバラ」の演出はなんだか悪趣味。冒頭だけが録画かと思いきや最後に全部が録画と分かってなおのこと悪趣味(LIVEのほうがまだ面白いというもの)。

 

春の祭典」一人ずつ椅子に座るシーン、オーケストラが踊り出すというよりは電車の中の私たちの姿。生贄がなぜ二人?(たぶん正しくは生贄は一人、庇う存在が一人)と思うが、二人いるとなんだかジゼルっぽい。あるいはマシュー・ボーン版白鳥のスワンと王子。からの、まさかの裏切り。ダンサーたちは常に巨大な「何か」におびえており、しかしその「何か」は観客の目には映らないので余計に怖い。

 

「Fratres Ⅲ」ダンサーたちを率いて先頭で踊る金森は力強く、圧倒的で、悪魔的でさえある。日本唯一の公共劇場専属舞踊団ではあるが、それと同時にNoismは20年近く金森カンパニーとして活動してきた。いつか金森が退く時、このカンパニーをどう残すのか。公共の存在として。と思っていたら、最後に金森が輪から離れ、彼のいた場所に落ちる砂だけが残った。

 

フェイクスピアの時と同様、観客が拍手を送る情景がなんだか好きだ。これは私にとって新しい感情。手を叩いているようにも、手を振っているようにも見える、高く挙げられた両腕。舞台の上と客席で交わし合う橙色。