地平線を覆うように、背の高い雲が東西に広がっている。季節外れに暖かい十一月のある日、畑のなかをゆく。かつてのトウモロコシ畑の一画に新しく建てられつつある家は、北から見ればただの家だが、少し低い南の道路から果樹を透かして見ると、西陽に光る城のようだ。梨園のネットの上にとどまっていたらしい数枚の葉が、風にさらわれて浮かびあがった。どこかへ飛ばされるでもなく漂っている様子が自分の意思で空を飛んでいるようで、降りてきた一枚をつかまえた。神社の大きな木がたっぷりとつけた赤い実と椿の花だけが、年の暮れを伝えている。

帰ろうと背を向けた時、枝でも落ちたのか、右手のほうで音がした。未来から来た誰かが、パンと手を叩いたようだった。

 

2020年11月22日投稿